はじめに
理系、特に生物系の大学以降の進路というと食品会社や化粧品会社、製薬会社というのが多くの方の印象だと思います。
ただ、これは一概には言えず、農学部であれば上記に付随し、農業、環境、など多くの就職先があるようなイメージであるのと反対に、理学部の生物系というのは「就職無理学部」と呼ばれるように、あまり就職先がないようなイメージです。
その代わり、理学部というと「え?研究者になるの?」と思われることも多々あると思います。
ただ、実際に研究室に入ってみて、博士進学という道があるということを知ったり、就職活動をしてみて、あれ?思っていたのと違うな?と思ったりすることもざらにあります。
今回の記事では、進路を決定する中で、どういった検討要素があり、どういったことがその先で待っているのかというのをざっくばらんに述べて行きます。
僕自身は、現在博士課程に所属しており、その後は学術機関で研究者になる道 (俗にいう アカデミア志望)です。
友人の話を聞いたりした体験談をもとに、個人の主観を述べていくので、間違っていることなどあるかもしれませんが、進路に悩む人の参考になればと思います
進路決定の時期
進路決定の時期というのは大きく分けて三つ存在します。
1. 修士課程への進学か 学部卒で就職か
2. 博士課程への進学か 修士卒で就職か
3. 博士卒後 企業への就職か アカデミア志望か
卒業後、就職を望む場合には、この三つのどこで就職をするのかということが検討要素です。
現在、国公立大学の理系では8割以上の人が修士課程まで進学するということも少なくはなく、2の選択肢を取る人が結構多いのではないかなというのが個人の体感です。
周りでは、周りが進学するからという理由で何の疑いもなく修士へ進学している学生も多いというのも事実です。
ただ、修士に進学しても2年しかプラスでいることができず、その大半を就職活動に費やすと何のための2年だったの?と体感思っている友人が多いのも事実です。
以下では各選択について、個人的なメリットや検討すべき要素を書いていきます。
1. 修士課程への進学か 学部卒で就職か
先にも述べたように、修士への進学者というのは多く、逆に学部卒で就職というと意外な顔をされることもあるかもしれません。
どちらの進路がいいということはその人や状況によるので、自身が決めるべきことですが、修士に行く前に一度立ち止まって「なぜ修士に進学するのか」を改めて考えてほしいというのが願いです。
現在修士の進学率が高い理由としては、修士に進学したほうが就活に有利だったり、最終的な給料が高かかったりするという背景があります。
ただ、2年という期間は大きく、学部卒の人は稼いでいる中で、修士学生は学費を払いながら大学にいるわけです。
学部卒の初任給を月給20万円、修士卒の初任給を30万円としてみると、
学部卒は修士に行っている2年間で480万円稼いでいます。修士課程では年間100万円の学費を払っていると考えると、2年間で580万円の差があります。
これを給料差10万円として考えると、580万円/10万円で58ヶ月(約5年)ほど給料面にビハインドがあると考えられます。
あくまで概算で、状況による違いもありますが、ここで言いたいのは、ただ単に稼ぎたいということであれば学部卒で卒業後、転職ありきで考えてゴリゴリ稼いで行った方が稼げるかもしれない可能性が十分にあるということです。
さらに研究できる期間についてもあまり変わらないかもしれないというのも事実です。
学部卒で就職する場合には3年でインターンなどに行き、3年の冬から4年の夏頃まで就活となります。
研究室配属はだいたい4年生のところが多いので、学部卒で就職する人は研究できる期間は1年もありません。
しかし、修士に進学する人たちは、4年の夏頃に院試があることが多いので、研究室や大学によっては学部卒と研究できる期間は変わらない人もいるかもしれません。
また、修士へ進学後は修士1年の夏頃から就活する人が多いので、なんやかんやそこから1年は就活と研究の同時並行です。
となると、研究に専念する期間は1年ほどです。
かなり短いと思いませんか?
卒論発表と修論発表でそこまで大差がないということは非常に多く起こりうることです。
だから、結局のところ修士でのに年間は一体何だったの?となることも少なく有りません。
だからこそ、脳死で修士に進むのではなく、修士課程の2年の歳月を学部卒よりあえて遅くさせるのにどういった意味があるのかというのを改めて考えることで、意味のある修士にすることで進学した意味があると思います。
個人的に修士卒のメリットはやはり研究室における人生経験だと思います。
研究室は一つの小さい組織であり、ある一種会社のようで、ある一種自己管理の世界線でもあります
サボろうと思えばサボれるし、頑張ろうと思えば頑張れるのが研究室だと思います。(もちろん例外はありますが。)
ただ単に大学に行きたくない、研究したくない、なぜ先生の言いなりにならないといけないのか と不満をこぼすのではなく、一つの組織に在籍してプロジェクトを進めていくという経験をしてほしいです。
その中で先輩や先生との関わりというのは絶対人生で大切な経験になると覆います。
また、就活と研究の同時並行をしなければならなかったりと、自身にのしかかる自分自身の選択の責任も重くなっていきます。
修士課程で行ったことがそのまま企業で生かされることは本当にごく稀ですが、より概念的にプロジェクト管理や自己管理、精神的な成長という面においては学部生活とはまた違ったことを学べる期間だと思います。
だから、修士課程卒で就職を考えている人はぜひ修士課程を有意義に利用してほしいです。
2. 博士課程への進学か 修士卒で就職か
次に、博士への進学か修士課程で卒業かどうかという点です。
近年は国や大学のサポート体制の整備により、博士進学者がかなり増えてきたような印象です。
また、企業側も博士人材がほしいということを言っているという噂も聞くぐらいには、博士号というものへの価値が上昇している印象です。
だからこそ、博士進学=物好き という感じではなく、戦略的に行っている人なども多いです。
ただ、博士進学者の中には、「博士にいかないと希望の就職先につけないから」という意見も度々耳にします。
なんか違和感があるのは僕だけでしょうか。
博士人材がこれからの日本で必要となってきていることにはあまり疑問はありませんが、大学に来る企業の人などは博士進学が就職の必須ステータスであるかのような言い分がちょくちょくみられます。(違ったらすいません。)
でも、本当に博士って就職ステータスとしているのか?というのが個人的な感想です。
社会人になってから博士取ったっていいし、転職で希望の就職先に入ったっていいし、博士の専門性が直接生かされることはかなり少ないし、そもそも応募要項に博士必須と書いてあるような業種はそこまで多くないのでは?ともうのも事実です。
確かに博士号を持っていれば就職しやすくなる企業もあるかもしれませんが。
ここで今一度考えてほしいことは、博士号を取ることへの自分自身の理由付けです。
博士課程は修士課程の卒業とは異なり、一つのプロジェクトを完成させるところまで行って (つまり研究を論文化するところまで行って) 取ることが求められている大学が多いのではないでしょうか。
決して博士号の取得は楽ではないと思います。
想像してみてください。
つらい思いして博士取って、希望の職種・企業に入れたとします。
ただそこで、一年目二年目でコーヒー淹れなどの、雑務しか任されなかったとしたらあなたはどう思いますか?それでもその企業に行きますか?博士号を取得したいと思えますか?
大概の人はノーだと思います。
よほどそこまで博士取得者を雑に扱う企業はないと思いますが、ただ最初から会社のエリートコースでバンバン責任のあるプロシェクトを進めていくというよりは、最初は研修スタートなところが多いのではないでしょうか。
だからこそ、本人の体感は自信の能力を100%活かす業務に就くまでに時間がかかるとしたら、雑務を押し付けられている感覚に近しいものを味わうかもしれません。
だから、就職のための博士を今一度考えてほしいのです。
決して博士での就活を否定しているわけではなく、むしろ肯定派ですが、戦略的に行ってほしいというのが願いです。
博士をとることに多くメリットがありますが、その一つとしてやはり研究をやり遂げるという過程を知っていることだと思います。
研究を大成させることは非常に困難が伴うし、論文執筆や投稿作業など、一見無意味に思えるものもたくさんあります。
また、その論文が読まれることもないかもしれない。学会などで研究発表もしなければならない。
それらもろもろの作業を経て研究は大成するものであり、それをやりきったかどうかというのが博士を取ったか取ってないかの大きな違いだと思います。
企業が求める博士人材というのはそう言った経験をしてきた人がほしいということの表れであり、単に企業の言いなりになる頭のいい雑用が欲しいのではなく、自主的に問題解決を行い、プロジェクトを進めていくような人に将来的になってほしいという企業側の願いがあると思います。
博士への進学で企業への就職というのは企業での大きな権利を持てるかもしれないパスだと思って、やりたいことや叶えたいことを実現するエゴのために という部分もあっていいと個人的に思います。
3. 博士卒後 企業への就職か アカデミア志望か
博士卒業後の進路でアカデミアか就職かも、かなり悩むポイントだと思います。
やれることが変わらないかもだし、変わるかもだし、企業に入ってたほうが無駄な業務が少ないかもだし、アカデミアのほうが自由度が高かったり、基礎研究ができたりなどするかもしれない、など色々と考えることはあると思います。
博士卒の就職については上記で書きましたが、逆にアカデミアはどうなのかなというのが気になるところです。
正直な話、僕自身がまだそこのキャリアに進んでいるわけではないので、コメントしにくい部分が多くあります。
ただ、一つ企業で研究職についた先輩が言っていたのは
「研究する」ということは企業であれ、アカデミアであれ変わらない。
単にやりたいことがそれにマッチするかどうかという部分もあるが、そこまで大差はないのかもしれない。
です。
企業の研究職に就いたからって言って、論文が書けないわけでもないし、思ったような研究ができないとも言えない。
逆に、アカデミアだからといって自由に研究できるかどうかもわからないというのもあると思います。
この二つは、自身がやりたいその先がどちらの道であれば叶えることができるのかというのをベースに考えると良いのではないかと思います。
必ずしも崇高な目的でなくてもいいし、生活スタイルなどもあると思います。
アカデミアでは任期なしの地位に着くまでに結構大変であり、その先もどこいくのかわからないと言ったようなことも多くあると思います。
ただ逆に、海外でのチャンスや日本でのいきたい場所への希望を叶えるチャンスは多いかもしれません。
博士卒業時には何かしらやりたいことがあると思います。
それを最大限叶えられる道を選ぶべきだと個人的に思います。
最後に
この記事は単になんとなく進路を決めるのではなく、自信のキャリアパスをもっと考えて欲しいという願いから書いています。
特に修士卒の人たちで、修士課程はなんだったのか?と思うっていう声を聞いて結構悲しくなりました。
人生をしっかり考えられる期間だからこそ、挑戦し、考える期間になればと思いますし、僕自身も今後のキャリアをもっと考えていこうと思います。