光遺伝学とは?:光で脳を操る最先端技術

研究を行う上で、神経活動操作を行う技術にはたくさんありますが、その中でも近年着目されているのが光遺伝学です。

光遺伝学とは一言で「光で神経活動操作を行う技術」であるとよく言われますが、いったいそれは何なのかというのは想像がつきにくい部分が多くあります。

そこで、本記事では 光遺伝学とは というのを題材に扱って、簡単に説明していきたいと思います。

光遺伝学とは?

光遺伝学は、特定の神経細胞を「光」で制御する技術です。

名前の通り、「光(optics)」と「遺伝学(genetics)」を組み合わせた科学分野です。
この技術を使うと、例えば青色の光を当てることで特定の神経細胞を活性化したり、逆に抑制したりすることができます。

光遺伝学の核心となるのは「オプシン」と呼ばれる特殊なタンパク質です。
このタンパク質は、藻類などの微生物に存在する光感受性分子です。

オプシンというと人間の目の光需要にも関わっています。
人が光を見るときは、光を受け取ると発火するニューロンがあり、そのニューロンの発火をおこなっているのが、オプシンと呼ばれるタンパク質です。

遺伝子改変や遺伝子技術を使って、特定の神経細胞にオプシンを発現させることで、神経に「目」のような光感受性を持たせることができます。
そして、光がその神経細胞に直接当たるとオプシンが作用して、神経を活性化させたり、抑制したりします。

活性化、抑制は導入するオプシンの種類によってきまってきます。

どのようにして光を神経細胞に当てるの?

目のように神経細胞は露出しているわけではないので、イメージがしにくいかもしれません。

光の当て方は動物種によっても異なってきます。

体の大きな動物(マウス等)

マウス等では、単に外から光を当てるだけでは脳などの中枢神経系に光が届かないです。

そのため、生体を扱う場合には、光ファイバーを使って脳の特定の領域に埋め込み、実験を行ったりします。

体の小さな動物・透けている動物(ショウジョウバエやゼブラフィッシュ等)

体が透けている生物や小さい生物は外から光を当てることでも中枢神経系に光を届けることができます。

そのため、実験セットアップはマウス等よりも簡単になります。

ただ、その反面、特定の領域を狙って光照射を行うといったことが難しくなるので、遺伝学的な神経細胞の絞り込みが重要になってきます。

また、ゼブラフィッシュは成体になって体色が濃くなると上手く光が届かないといったことも多くあるそうです。

体が透けているというのは非常に光遺伝学には有利に働くことから、透明な魚類(ダニオネラ)を用いた研究にも近年注目されています。

もっと小さな生物(細胞等)

細胞等を狙って照射する場合には、もちろん外から光を当てることができますが、それに加えて、共焦点顕微鏡などを用いて、レーザー光を特異的に照射するといったこともできます。

総合して、光の当て方は一概には言えないですが、生物種によって適した方法があり、一長一短です。

光遺伝学で何ができるの?

  1. 脳の研究
    光遺伝学は、脳の中で特定の神経回路がどのように働いているかを調べるための強力なツールです。
    例えば、恐怖を感じるときに活性化する神経回路や、学習や記憶に関与する回路を詳細に解析できます。
  2. 治療への応用
    光遺伝学は将来的に、てんかんやうつ病、パーキンソン病などの治療に応用される可能性があります。
    これらの病気は神経回路の異常が原因とされており、光で異常な回路を調整できれば治療につながると考えられています。

特に行動神経学における光遺伝学はかなり強力なツールとなっています。

他の神経活動操作手法(熱遺伝学や化学薬品を使った神経活動操作)と異なり、時間解像度が非常に高いです。

また、神経細胞の絞り込みがかなり簡単に行うことが可能であるという側面からも、必須技術となってきています。

光遺伝学がノーベル賞候補に!

光遺伝学の開発は、科学界に革命をもたらしました。
そのため、現在光遺伝学を開発した研究者たちは、ノーベル賞の有力候補として注目されています。

この技術の最初の開発者であるカール・ディーサーラス博士やエドワード・ボイデン博士らは、神経科学の分野において多大な貢献をしています。

特に、光遺伝学が脳科学の研究方法を根本から変えたことが高く評価されています。
脳の複雑な機能を解明するだけでなく、精神疾患や神経疾患の新しい治療法の開発につながる可能性があります。

なぜ光遺伝学が特別なのか?

副作用が小さい、時間制度がかなり高いというのが光遺伝学を特別たらしめる要因だと思います。

従来の方法では、薬物や電極を使って神経細胞を操作していましたが、これらには副作用や精度の低さといった課題がありました。

一方、光遺伝学は極めて高い空間的・時間的精度を持つため、副作用が少なく、非常に繊細な操作が可能です。

最後に

光遺伝学はまだ新しく、想像しやすい技術ではないと思います。
ただ、近年の神経科学における光遺伝学による恩恵かかなりおおきいです。

近年は光遺伝学の技術の幅を広げるような技術の開発も行われてきています。

今後注目となる実験手法なので、興味があればもっと調べてみてはどうでしょうか。

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